居住用賃貸物件の現状回復、経年劣化を考慮せずに賃貸人への原状回復義務を命じた裁判例

相談事例 私が貸しているマンションが燃えちゃった!

賃貸物件で火災発生
Aさんが所有している賃貸マンション(築35年)の1室で、賃借人がタバコの不始末により火災が発生。

室内前面が完全に燃えてしまった。
部屋が使えなくなったので、借主である賃借人はその部屋を退去しました。

大家である賃貸人は、給排水管設備、フローリング、壁、電気ガス設備など補修する費用として、160万円を支出することになったので、その全額を賃借人に請求しました。

ところが賃借人は、「経年劣化の年数を既に経過しているのだから、補修義務はない」と反論。
支払に応じません。

こんな場合、どうなるのでしょうか?

ポイント

確かに、耐用年数を超えた部分については大家がその修繕費を補修するべきという考え方があります。
国土交通省の原状回復ガイドラインにも確かに記載されています。
もっともこのガイドラインは法律ではなく、目安ですので当事者がこれと異なる取り決めをすることは問題ありません。

例えば、壁紙は耐用年数が6年と決まっているので、貼り替えてから6年を経過すると、その壁紙に落書きがされている場合でも大家は請求することができないのです。

価値がゼロなのだから、仮に借主が負担するにしてもゼロ円ではないか。という理屈です。

この事例では、20年居住の後タバコによる火災が発生していますので各種設備の耐用年数はとうに経過しています。
価値ゼロだから、補修費もゼロという主張は一応筋が通っているように思えますよね。

では、タバコによる火災についても同じなのかどうか?

判例

原状回復裁判所判例

賃貸物件の原状回復については、前述した国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が発表されて以降、大体一緒で、
「ガイドラインで想定された経年変化の年数を超えた部分に関しての原状回復費用は、大家である賃貸人が負担するべきである」というものです。

しかしながら平成28年8月19日東京地方裁判所の判決もあります。

要約すると「借主は通常の使用ではなく、通常を超える劣悪な使用方法により火災を引き起こし、通常使用により生じる程度を超えて賃貸物件の設備等を汚損、破損したと認められる」というもの。

結果的に「通常使用していれば、賃貸物件の設備等として価値があったものを汚損、破損させたのだから、賃貸物件の設備等が本来機能していた状態に戻す工事を行う義務があるというべきである」しました。

本来賃借人には、「賃貸物件を善良な管理者としての注意を払って使用する」という義務を負っています。

善良な管理者とは法律用語なのですが、自分の所有物以上の注意をもって維持管理することを指します。

従って、善良な管理者の注意を払っていないことによる損害は借主が負担するべきだ。という結論になったのです。

ということなので、例えば、借主が壁紙に落書きをしたのであれば、その落書きを消す費用は借主が負担する。という事になります。

ちなみに、この裁判例では、工事費用の他「原状回復するまでにかかった日数に相当する家賃分」の請求まで認めています。

当事務所が管理する物件は、ただ単に賃貸契約書を作成するのではなくこういった事態も想定して日々新しい文言に改修して提供しています。

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